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「歴史的建造物調査業務」について
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(株)グリーンシグマ 建築設計室
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1. 背景 |
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わが国においては、高度経済成長期からの国土開発、生活様式の変化などにより、多くの歴史的建造物が、社会的に認識される間もなく消滅の危機に晒されています。
近年、これら歴史的遺産としての建造物を再評価し、上手に活用しながら保存・継承していくことが注目されてきています。
まだ日本の各地においては、近世からの社寺建築や、城下町時代から続く旧武家屋敷、近代化遺産や、農村集落など、将来に継承していくべきものは数多く残されていますが、その地域の住民や行政でさえ、自分たちの住むまちのどこに何があるのか、正確な情報を持っていないのが一般的です。
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2.目的 |
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そこで当社では、以下のような政策や事業に活かすため、各地の歴史的建造物等についての調査を行っています。
・歴史的遺産の掘り起こし
→どこに何があるか。何に活かせるか
・地域の観光資源の掘り起こし
→地域のために活かすには?
・都市計画、地域計画、道路計画等の基礎資料
→安易に壊さないために
・旧市街地の住宅密集地、木造建物等の地震・火災対策
→安心して受け継ぐために |
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3.歴史的建造物とは |
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調査はまず、その地域にどれだけの歴史的建造物が存在しているのかを把握することから始めます。このとき「歴史的建造物」といっても何が「歴史的」なのか?という疑問があると思いますが、その指標の一つとしているのは、文化庁が平成8年度から始めている「登録文化財」の制度です。そこでは「概ね50年以上経過している」ということが一つの目安となっています。50年というと、第二次大戦前のものは全て対象※になるということです。
※制度が始まった平成8年当時はそうでしたが、最近では戦後の建築でも50年を経過しているものもあり、歴史的な評価がされてきています。「歴史的」といった評価は、時代が進むにつれて変化して行くものといえます。
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4.調査概要 |
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調査では、その地域に存在している50年以上経過している建造物を、行政が把握している家屋調査台帳や宗教法人名簿などから拾い出し、地図上でその場所を確認します。
次に実際その場所に行って、その建物の所在を確認します。机上のデータだけでは、実際にその建物がどのような状況にあるのか正確につかめないためです。現地に行ってみたら、既にその建物が新しく立て替えられていたということも度々あります。
同時にその建物を外観から観察し、おおよその分類・評価をします。そして写真を撮りカード式の台帳を作って行きます。(※別紙資料-2「調査台帳」参照)
そして、その地域全体の歴史的建造物の全体が把握できたら、次は個別の建物の調査と評価に入ります。その数はかなりの件数となるために、個別調査の際には、優先順位をつけて行きます。
その地域の中で特に目立つもの、歴史上の出来事の舞台となった場所、地域の人々から愛されているもの、なくなってしまうと将来その再現が非常に困難な、今では珍しくなった技術が用いられているものなど、その地域にとって大切と思われるものを優先していきますが、それ以外にも、その地域の典型的な農家の主屋や納屋なども対象にすることがあります。これらはその地方の歴史的な景観の形成にも一役を担っているからです。
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5.調査結果の波及効果 |
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こうして調査した建物は、先の「登録文化財」として国に登録申請することもあります。
登録文化財制度は、一定の条件さえ満たせばその数は基本的には制限がなく、登録した建物に対する制限もそれほど厳しいものではありません。一言で言えば「ゆるやかに守り、積極的な活用をはかる」制度であり、まさにこの調査の目的に合ったものだといえます。
また、個別の調査結果に基づき、その歴史的建造物を保存し活用するといった事業に展開するものもあります。
例えば新潟市の例では、同様の建造物調査により取上げられたもののなかから、旧商家の建物が白山公園内に移築保存されることとなり、「燕喜館」の名称で伝統行事等に活用されています。
また、近代建築の「旧第四銀行住吉町支店」が「みなとぴあ」に移築保存されるなど、壊されかけていた歴史的建造物がその姿を残すことにつながりました。
さらに老舗料亭の行形亭や鍋茶屋が国の登録文化財となることなどにより、歴史的建造物に対する市民の理解が高まり、今後も「旧小澤家住宅」「旧日銀支店長役宅」「旧新潟市長公舎」などの歴史的建造物が市民の財産として保存活用される動きを見せています。
冒頭の目的でも述べたように、本調査によって得た資料は、都市計画、地区計画、道路計画等の基礎資料や、伝統的建造物等の住宅密集地、木造建造物等に対する地震、火災等の対応策など、都市防災にも反映可能な基礎資料ともなります。
近年では、平成16年に制定された「景観法」に基づく景観計画策定に際しても、地域の景観形成に寄与してきた「歴史的景観」とは何かを探るための基礎資料ともなります。
※佐渡の西三川の砂金採掘集落の文化的景観など
こうして地域の歴史的建造物を調査、把握し、祖先から受け継いできた歴史的な資源を大切にして行くことは、将来を担う次世代に対する我々の責任でもあると考えています。
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6.これまでの歴史的建造物調査事例(一部) |
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@新潟市歴史的建造物調査
□平成4年度(町屋、農家、近代洋風建築等)
□平成5年度(神社、寺院建築)
□平成10年度(補完調査)
・家財調査台帳より昭和20年以前の建造物をリストアップし地図上へ表記した。(約2万棟)
二次調査対象選定のため580件を外観より選定。(写真撮影、台帳整理)
三次調査対象107件を選定。(実測調査)→報告書のまとめ
・宗教法人名簿等から518件をリストアップ。
一次調査対象395件を外観より選定。(写真撮影、台帳整理)
二次調査(神社49件、寺院57件)を実施。(実測調査)
→報告書のまとめ
文化庁の登録文化財制度の制定(平成8年)に伴い、先の平成4年度調査リストの中から、特に重要なもの30件85棟に対しての補完調査を実施。そのうち40棟を登録文化財に申請。
A埼玉県秩父市歴史的建造物調査(中心市街地古き良き建造物再発見事業)
□平成13年度(中心市街地の町屋、近代洋風建築等)
・秩父市中心市街地活性化事業に基づく、中心市街地内に存在する建造物を対象とする。
・約2,000件の建造物の中から、現地の悉皆調査により対象建物約600件を選定。
・外観の写真撮影、調査台帳に整理。2次調査対象候補として約100件を選定。
□平成14年度〜(2次調査)
・各町内の代表的な10件程度に個別調査を依頼。個別調査(実測調査、内部写真撮影)
→ 登録文化財への申請資料を作成し報告書をまとめる。
□その後も毎年10件程度調査予定
B新発田市歴史的建造物調査
□平成14年度
・社寺建築:
宗教法人名簿等から337件(神社207件、寺院111件、教会19件)をリストアップ。
調査対象337件を外観より確認。(写真撮影、台帳整理)
・一般建築:(町屋、農家、近代洋風建築等)
固定資産課税台帳より昭和27年以前(築後50年)の建造物をリストアップ。(8,169棟)
地図上へ用途、建設年代、構造別に表記。
□平成15年度(町屋、農家、近代洋風建築等)
1次調査リスト、地図より、旧新発田町内と会津街道沿いの地域を中心として(約4,000棟)調査員が現地を訪れ、外観より建物概要を確認。(写真撮影、台帳記入)。
C佐渡金銀山近代化遺産保存管理計画
□平成15年度〜18年度
・ 佐渡金山を世界遺産に登録することを目指して、佐渡金山の鉱山遺構調査
□平成19年度
・ 調査の総括、取りまとめ予定
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【お問い合わせ先】 |
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株式会社グリーンシグマ 建築設計室 担当:片柳、梅嶋
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